第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
その証拠に、バックコート内から私たち3人の背中にそう言ってきた詩織の声色は、“心配”という言葉を付けるのに相応しい。
今あいつがどんな表情をしているかも、想像がつく。
詩織が嫌がる気持ちも分からなくはない。
それでもやっぱり、この状況で点を取り返すには、キャプテンが言ったアレを、アレするしかねぇーんだよ。
そんなことを思っていると、
「ようは私に“囮になれ”ってんだろ?」
と、キャプテンが不服そうに私にそう聞いてきた。
だから私は、
『言い方違うけど大体そんな感じ』
と返した。
だとしても、“囮”ってのは聞き捨てならねぇーな?
言い直させてもらわねぇーと。
『…ってことで、生贄よろしく』
「“違う”って訂正したにしては
言いぐさが酷ぇーな。
そんなに言い直したかったのかよ」
そう言ったキャプテンは、やっぱりどこか腑に落ちない表情で。
それなのに、どこか開き直ったような雰囲気も感じさせた。
と言うことは、
「…分かったよ。うまいことやる」
腹決めたな?