第3章 表があれば裏がある
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分かる。よく分かる。
恵まれていないと感じるのは、単に今の場所に満足していないからだろう。
それでも尚、前進より安寧を求めるのは。
歩んだその先に、いい場所が待っているとは限らないから。
はるか彼方の、まだ見ぬ桃源郷という不確かな存在を、夢を見ていた方がよっぽど幸福なんだろう。
今日も妄想の中で足踏みをして一日が終わる。
それか、もしくは…
夢を見ることすら、放棄してしまっただけなのか。
そんなことは知ったこっちゃないのだが。
どちらにせよ、脚は動かさないとな。
生きている以上。
「場所という概念は、不確かだ。」
どこかの誰かがそう言った。
いつ。どこで。
どんな意図で、そう言ったのかは定かではない。
分かっているのは、それが過去のどこかで。
見知らぬ誰かの物語に刻まれた、ということ。
それだけだ。
進化の歩みを止めたまま、コンクリートの上を。
人生を歩むと言う矛盾に知らん顔をして、誰もが自分の居場所を確保するのに必死なこの街で。
当たり前のように居場所を与えられた者たちで。
東京体育館は、再び賑わいを見せていた。