第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
第4クォーター、残り5分14秒で試合再開。
相手チームからスタートしたボールは、数回の攻守変動を経て。
結果、私たちのディフェンスを搔い潜り、相手チームの得点へと変わった。
今度は私たちが攻める番だ。
時間も多くは残されていない。
すぐにでも奪われた点を取り戻したかった。
自陣ゴール下からリスタートした時。
相手選手は、既に全員フロントコート側に移動していた。
「ん?」
「なんだ?これ…」
私と一緒に移動を始めた他のメンバーも。
相手チームの様子に、少し違和感を感じたようだ。
さっきと全く違うんだ。
相手チームの守備が…なんと言うか…
「中固めてきたな」
私の隣でボールを運んでいるキャプテンが、そう小さく呟いていた。
あぁ、なるほど…
どおりでディフェンスに来ないと思ったら。
“ゾーンディフェンス”ってことか。
つまり、タイムアウト直前みたいに1on1…
所謂、自分がマークする相手をあらかじめ決めている“マンツーマンディフェンス”みたいな守り方ではなく。
自分の守る“エリア”を決めてきた、というわけか。
パッと見…これは“2-3(ツースリー)”だろうか?
スリーポイントラインより外に2人。中に3人。
私はこの時理解したんだ。
それを見て気づいた。
詩織と私…つまり、CとPFのインサイド2人を警戒して、対戦校はこの形を選んだのだということを。
私たち2人の能力が爆上がりするエリアが、見事に抑えられてしまった。