第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
やれやれ、やっと閉幕か…小劇場…
そう思って、ぼちぼち試合に戻る準備を始めようとした。
それなのによ…
「天~どうしよう~!
嫁ぎ先の家庭が
嫁いびりとマザコンだったよ~!!」
何か来たし。
本来、ベンチの反対側にいるはずの紗恵が、今はなぜか私の目の前にいて、ベンチに腰掛ける私のことを見上げてくるんだ。
突然の馬鹿の到来に、「さて、何を言ってやろうか」と考えてしばらく黙っていると、
「黙ってないで何とか言ってやってよ~
ねぇ~天パパ~!!」
私、馬鹿の実父だったらしい。
そして、私はいつの間にか。
バカ娘(紗恵)だけにはとどまらず、横に座るメンバー全員の視線を集めていたんだ。
「なに?!天は紗恵のパパだったのか?!」
「んなわけあるか!!」
「もぉ~みんな落ち着いてよ~!!」
「パパ~!髪はザシュッ!ってなるし
なにより汗まみれで悲惨なんだよ~
何とかしてよ~!!」
『………』
「暗い雰囲気にならずに済んだ」とか、もうこの際どうでもいいや。
こいつら、うっせぇ。
ここでタイムアウトが終了し。
試合が再開した。
よかった、助かった。