第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「きゃ?!!」
突然、私の耳の届いた、その…
たぶんだけど、詩織の声につられて、私は振り返った。
『ん?』
そして、振り返ったその先で私が見たものは、
「あぁ〜ごめんなさい!」
?「え?大丈夫だけど?」
自分より背の低い相手選手に向かって、頭を下げている詩織の姿だった。
目線を相手に合わせにいっているのか、中腰になっている。
なんだ、ぶつかっちまったのか?
タッパがデカいと、いざって時に怪我を負うのは相手の方だから。
詩織(本人)が気をつけて、危機に気付けるのはあいつのいいところ…なんだけどな。
だけど、気のせいだろうか?
詩織が中腰になったその分だけ、相手方も引き気味になっているように見えるのは。
「ほんとワタシ視界が狭くて周り見れてなくて!
おまけに最近急に背が伸びたせいで
尺とか全然分かってなくて…!
ごめんなさい!!」
?「少しぶつかっただけだよね?
全然大丈夫なんだけどな…」
始まった。
詩織の“良い子ちゃん”通り越して、“良い子ちゃん過ぎてウザい”スキル発動。
勘弁してくれ、今日これで何回目だよ…