第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
こちらがオフェンスに切り替わってから、詩織がゴールを決めるまで…
今のはたぶん、8秒ギリギリ。
先ほど、キャプテンが私に言ってきた通り。
確かに危ない橋を渡ったのかもしれない。
けれど、連携を踏まえれば、今のは間違いなく合格点だったろう。
バスケ以外では、ビン底眼鏡をしないといけないほど目が悪い詩織も。
コンタクトに変えて、一度こうして選手になれば…
たちまち有能なCに大変身だ。
…なんか、これだけ言うと戦闘ヒーローっぽいな。
あいつの見た目だと“美少女戦士”って言った方が良いんだろうけど。
なんかこれも聞いたことのあるフレーズだから、いろいろダメな気がする。
ゴール下のディフェンスが劣ってると、うちのCにはまず勝てない。
仮にディフェンスを酷使されても、C特有の“押される力”に対する耐性は、私より遥かに上だ。
少し妬ましいくらいに。
たとえ、どんな体勢に追い込まれたとしても。
持ち前のボールハンドリングのスキルがあれば…
詩織(あいつ)はゴール下であれば、必ず決める。
だから先ほどのように、攻守がいきなり切り替わった時なんか、有効以外の何物でもない。
Cとしての勉強と特訓は欠かしていないだろうし。
それなりの経験も積んでるから、うちのチームのCを任せられるのは。
やっぱり詩織しかいないんだと思う。
「きゃ?!!」
『ん?』
まぁ、ゴール下にいれば…の話だけどな?