第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜東京体育館〜
この熱気は…私のか?
それともこの場に集まる観客のものか??
全国大会への出場が決まって。
それでも、地元の知り合いにですら「試合を見に来てほしい」とは頼まなかったのに。
私がそんなことをする必要は、端からなかったかのように、会場は多くの人で溢れていた。
観客席となっている2階席よりも上の方は、素性の知らない大人ばかりで埋まっていた。
てか満席なんじゃねぇーか?
下手したら。
そんなにも注目されるべきものなのだろうか。
いま、私たちがやっていることは。
そして、今この瞬間。
全観客の視線を集めているのは。
28m × 15m のバスケットコートの中にいる、10人の少女たちだ。
「第4クォーター。開始します」
少女たちは、齢13~15歳。
私も、その10人のうちの1人。
アナウンスが聞こえてきたのを合図に。
首にぶら下げていたヘッドバンドを、一気に額まで持ち上げた。
視界を邪魔するものなんて、一切なくなった時…
「よし行くぞ!!」
「『 おぉ!! 』」
いま一度、ユニフォームをバスパンの中に仕舞い込み、掛け声と共にコートへと踏み出す。
その足並みに合わせるように、私のバッシュがキュッ!っと音を立てた。
チームのユニフォームを纏い。
チームの8番を背負い。
戦うために。
私は再び、白線を越えてコートに立つ。
…ちなみに。
今から言うこれは、私じゃなくてチームメイトがそう呼ぶから。
私も受け入れているんだと思ってほしい。
変に拒否せずに、「みんなが言うなら」と。
その賛美に託けて。
だから自分で言ってみても、別にバチは当たらないはずだ。
でもその代わり。
その賛美を裏切らないよう、私は自分の役目を全うする義務がある。
それこそ、自分自身で口にしてしまったら。
もう責任転嫁の余地は与えられないと思うから。
私は。
このチームの、エースだ。
【藤堂 天 2年 8番 PF 166cm】