第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜東京体育館〜
先輩たちに任せたら、確かにチーム全体の戦力は落ちる。
“私たちに比べて”な?
でも勝ったし。
あとは逃げるだけになったとしても。
多少点を奪われたとしても。
こっちの追加点がなくても…まぁ勝てるんだろう。
仮に「お前はそれでいいのか」と、聞かれたりでもしたら。
…まぁ、確かに。
いい気はしないかもな。
「それでもいいんじゃない?」とは思うけれど。
進んでその方法を取るかは、また別の話だ。
“自分の代わりとして出る選手”が。
“自分よりも戦力に劣る”ってのは…
今、私が座っているこのベンチに。
“私の代わりに座らせる”ってのは…
イヤ…なのかも知れない。
『………』
しばらく、冷静になって考えてみた。
やっぱり嫌だ。
確実に嫌だ。
・・・・
このスペースは私のものだ。
試合に出るのも、スタメンの座も。私のものだ。
誰にも渡さない。
このベンチに腰掛ける権利。
それは、コート上で戦った私たちのものだ。
たとえ先輩相手でも。
コートでプレイするのが、私たちである限り。
「ベンチはいつでも、私たちのために空けとけ」って。
そう言うと思う。
「うちのチームの最大火力。
全国に見せつけてこい!」
こんなこと、最低なことなのかもしれない。
けれどその言葉、私には別の意味に聞こえてしまった。
「お前たち2年で勝ってこい」…
監督に、そう言われた気がしたんだ。
冗談でも、先輩の心配している余裕なんて。
ねぇーのかもな。
確かに…
俄然強いよ、確かに。
私たち2年の方が。
先輩たちよりも、強い。
大事なのは、チームで勝つこと。
2年生の勝利が、チームの勝利になり。
チームの勝利は、そのまま先輩たちの勝利になる。
だから、“年上優遇”とか。
亀裂を生まないための“仲良しこよし”の結果が、“敗北”じゃなんの意味もない。
どのみち実力だ。
実力で私たち2年はスタメンになった。
だから先輩たちがコートに立てないのも…
それもまた、実力だ。
だから譲らない。
強いものがコートに立つ。
コートの上で“年功序列”は、私が許さない。
試合(それ)がたとえ…
全国の舞台だとしても。
決勝トーナメントの、準決勝だとしても…だ。