第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜東京体育館〜
「最終クォーター。
このまま2年だけで行くぞ」
それはつまり。
私たち5人に「もう1回コートに出て走ってこい」って言ってんのか?
スパルタだな、うちの監督。
メンバーチェンジしてくれたっていいだろ。
つか口走ってた“調整”どこ行ったよ、“調整”は。
それに加えて、昼休憩明けの午後からの試合も、スタメンは私たち5人なんだろ?
鬼かよ。
こりゃ焼肉奢ってもらう程度じゃ割に合わねぇーな。
ていうか、それ以前によ…
「このまま2年だけで行くぞ」
それの意味。
本当に分かってんのかよ?
その言葉に、今年が最後の先輩たちがどう思うのか。
私でも想像はつく。
決していい気はしないだろう。
“調整する”ってのが頭にあるんだったらよ。
出してやってくれよ。
先輩を…
今が試合の真っ最中で、かつ自分がレギュラーである状況にも関わらず。
私が一後輩としての、それなりの先輩への気遣いを抱いているというのに。
その反面、監督は全てを、
「ここで戦力落として勝っても意味がない」
という、その一言だけで片付けてしまった。
うわ、言った…
黙って聞いてりゃ。
監督(この人)言っちゃったよ。
頼むから本音でも言わないでくれ、そういうのは…
けれど…
私も言わないだけで、頭では思っちまってるんだよな。
監督が言っていた、“戦力は確実に落ちる”ということを。