第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜東京体育館〜
「お前ら。この試合は貰ったも同然だが。
最後まで締めてけよ?」
「『 はい! 』」
威勢のいい少女らしい声が、ベンチを中心に会場に響いた。
…と言っても、もともと会場がうるさ過ぎて、言うほど響いてなかったかもな。
試合は残り8分。
私はいけるけど、他のメンバーはどうだろう?
“メンバー”って言うのは、第3クォーターまで出ずっぱりの、私を含めた選手5人のことだ。
最終クォーターも出れば、全員がフルで出ることになる。
それに相手だって弱くはない。
だから全員、それなりに疲れている。
でも、この組み合わせを律儀に続けたこと…
長い目で見れば、結果的に良かったのかも知れない。
さっきの第3クォーターで、対戦校との点差を更に広げてきたのが良かったんだろうな。
チームの誰もが、最終クォーターを前に勝利を確信することが出来た。
残り8分じゃ、この点差は埋まるか開くかはするけれど…
“追い越す”なんてことは、まずないだろう。
その事実は、チームの精神面にも確実にプラスになったはずだ。
ただでさえ緊張状態が続いてた中で、“良い雰囲気”って言うのがチームに流れ始めていたんだと思う。
だから、監督が「貰ったも同然」って言うくらいなら。
温存を兼ねて、メンバーチェンジって手もあるのではないだろうか。
私がそう思っている反面、監督は、
「調整も兼ねてメンバーチェンジ…」
と、私たちに言って聞かせたんだ。