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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●藤堂 ??● 〜東京体育館〜


右膝に置いていたヘッドバンドを持ち上げると、ずっしりと重かった。
すぐに分かった。
それが“水分的”な重みだということを。


それに、ほら。
ユニのパンツが、右膝の部分だけ変に濡れて色が変わってしまっている。
白い紙にグレーの絵の具が滲んだみたいだった。


ダメだこれ(汗が)絞れるやつだ…
どうしよう…
私はこんな重量を頭につけて走っていたのか。


あたふたしてる間にも、インターバルは確実に終わりに近づいているし。
ヘッドバンドは手に持っただけで、吸収した汗が溢れ出しそうになっていた。


だからここでも使ったよ。
タオル。
もうマネージャー様様だった。


右手で堰き止めていたヘッドバンドを、左手に持ったタオルで包んだ。
しっかり包んだことを確認したら、雑巾を絞るみたいにタオルを捻った。


中にあるヘッドバンドから、外を覆うマネージャーがくれたタオルに。
徐々に水分が移っていくのを、掌から感じ取ることが出来た。


しばらくした後。
ミシミシ…と言ったのは、タオルの方か?
それともヘッドバンドの方か?


どっちにしろ、それは“そろそろヤバい”の警告音ってことだ。


だから、力を緩めて、タオルとヘッドバンドにかかる負荷を解いた。
その後、中から出てきたヘッドバンドは。


すっかり見違えた様子で、私の前にその姿を現した。

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