第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜東京体育館〜
流石に過大評価し過ぎだろうか。
だとしても、肥大し過ぎた緊張を取り払ってくれるのは。
案外こういう、小さなもので十分なのかもしれない。
しばらくすると、鼻腔が香りに慣れてきた。
それと同時に、タオルの中で温まり、二酸化炭素の割合が増えた空気に、呼吸がだんだん辛くなってきた。
魔法が解ける…
その前に、新しい空気を取り込まなければ。
限界レベルを感知した生存本能が、タオルを急遽、私の顔から引き剥がした。
『っはぁ…!!』
視線は未だ地面の方に向いたまま、口から大きく息を吸った。
喉の奥が、ヒンヤリと冷えた。
タオルと瞼で覆っていた2つの瞳は、直前の暗がり故に瞳孔は開き切ったまま。
唐突に視覚を取り戻した瞬間、眩しすぎる人工の明かりに目の前が真っ白になった。
忘れないで欲しいのは、私はこの時。
天井ではなく、真反対の床を見ていたということ。
光源からの光を反射する、ワックスのかかった床が眩しかった。
顔が映るほどに綺麗なコート…
「影なんかこの場に1つも生じさせない」とでも言うように輝く数十個、数百個のライト…
四方八方から、私を照らしていた。
その条件が試合環境として適切なのは分かるけれど。
だとしても、電力を惜しみなく使い過ぎではないだろうか。
東京体育館。