第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 ??● 〜???〜
監督には適当に返事をして、私はアイスボトルからスポドリを煽り続けた。
それまで感じていなかった疲労が、インターバルに入って久しぶりに腰かけた私のもとに、後追いでやってきたような気がしたから。
その最中に、監督とマネージャーの1人が話しているのが横目で見えた。
単に見えたってだけで、気にも留めなかったが。
しかし、その2人の会話に、私の名前が出てきたことだけは分かった。
そしたら今度は、そのマネが。
監督のもとから、私に向かって歩いてくるのが分かった。
だから「自分の前で止まるな」と確信したところで、天井に向けていた顔を下げて、スポドリを飲むのを一旦止めた。
ボトルから口を離して、もう一度視線を上げると。
そこには、1個下のマネージャーがいた。
その後輩マネは、明らかに申し訳なさそうな表情で「先輩。すみません。」と言い。
明らかに申し訳なさそうな素振りで、私の手からスポドリを奪った。
「貴重なインターバルです。
水分補給だけじゃなくて
しっかり休んでください」
後輩のその言葉を聞いて、私は全てを理解した。
あの監督、自分が言っても聞かないからって、マネを使って私の慈愛心を煽ったな?
相変わらず人の良心に付け込んでくる。
その罠にまんまと嵌まって、ボトルを呆気なく手放してしまったのは、間違いなく私なんだけれど。