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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●?? ??● 〜???〜


人は一日に、何リットル汗をかくと思う?


よく言うよね。
「人は自覚しているより、ずっと大量の汗をかく」って。


それと、これもよく聞く。
「喉が渇いた時には、既に脱水状態だ」って。


“具体的な数値”?
そんなの私も知らないよ。
大人が言っていたのを覚えてるだけ。


「水分は沢山摂りなさい」と言うセリフは、人間のメカニズムなんて知りもしない頃からずっと聞かされてきた。


小さい頃はテンプレ化したそれに釈然としなかったけど、今ではその重要さも理解しているつもりだ。


「なんでそんなことが言えるんだ」だって?
だってこんなにも。


スポドリが旨い。


「おい藤堂!飲みすぎんな試合に響くだろ!!」

『サーセン喉乾いて』


今を昔と比べてみても、対して成長したとも思わないんだけれど。
それでもその経過の中で、学んだことがある。


それは、「水分を摂らなくても摂り過ぎても、どのみち怒られる」ということ。
こうして監督の怒号が飛んでくるのも、もう慣れてしまった。


ただ、今回はタイミングがもの凄く悪かったみたいで。
スポドリをがぶ飲みしているのを、監督に見られてしまったらしい。


いつもはバレないように気を付けているんだけれど。
水分欲しさに、“監督専用アンテナ”の精度が落ちてしまったようだ。


「適量というものを知れ適量を!!」

『ウッス』


普通、水分を摂取しているくらいで怒鳴られはしないはずだ。
だったら、どうして私は怒鳴られているのか。


それは単に、私の水分摂取量が引くほど多いからなのだろう。
「飲め!」って言われるところで「飲むな!」って言われるくらいには。


ただ、見落とさないで欲しいのは、多いのは摂取する水分量だけじゃない。
噴き出る汗の量も、目に見て多いということ。


常に走り回っているんだ。
しかも後半に入っている。
汗の量が多くなるのは当たり前だ。


「体が求めている」。
これだけでも立派な理由だろ。


「適量を、適量を」とは言うけれど。
汗に比例して水分摂取量が多くなるのは、むしろ必然ではないのだろうか。


そうやって、監督の言葉と、自分の“体内水分パラメータ”を天秤にかけた結果。
私は後者を選んだ。


簡単でいいだろ?

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