第3章 表があれば裏がある
●藤堂 天 ● 〜東京体育館〜
最初に見えたのは、長く美しい白髪。
次に入ってきたのは、綺麗な横顔。
もちろん目を奪われた。
なんならすぐに目で追いかけた。
大会会場に天使がいたのか。
もしくは自分が天界に召されたのかと思った。
大会会場にいる私を迎えに来た天使だったなら尚よかったのだが。
遠のいていくその小柄な背中は、学校名がプリントされたジャージ姿だった。
一瞬の出来事にもかかわらず、そのときの光景はすべて捕らえることができた。
ちなみに、咥えていた容器は落とさなかったぞ?
驚きはしたけれど。
ちゃんと私の口からぶら下がっていた。
天使。
改め、白銀の髪の少女は、同じジャージに身を包む男の子で構成されたグループの輪に飛び込んでいった。
私はその時にようやく、少女が大会出場校の一人であることを認識した。
男バスの関係者ということは、マネージャーということだろうか?
正直、男バスのことは蚊帳の外だった。
その時までは。
だけど、白銀の少女が男バスのチームの輪に飛び込んでいくのを見たその時だけは。
女バス男バス関係なく。
あれほど綺麗な女の子が、広い意味で同じバスケに関わっている、ということが純粋に気になってしまった。
最初は、そういう興味からスタートした。
別に変な目で見てたわけじゃないぞ。
その他大勢の一部として、美しい少女に目を奪われただけだ。
周りの選手がどんな心境で少女を見ていたのかは分からないが、私が白銀の少女を見ている最中は、こんなことを思っていた。