第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
ブルージュの少女は考えた。
見聞きしただけのどこかの誰かのものではなく。
自分の青春について。
同じ空間の数メートル向こうでは、白銀の少女がヒロイン的青春を謳歌している。
それは例えば、こんな青春だ。
道を歩くだけで誰もが振り返る。
チームメイトの間で取り合いが始まり。
大会直前に仲間と気持ちを言い合って。
笑うだけで人を幸福にできる。
終いにはライバル校まで自分を欲しがる。
そんな青春。
それなのに自分の青春はなんだ?
1人は適当に遇らうし。
1人は理解すらできてねぇし。
1人は的確すぎて言い返せないし。
1人はなんか詳しいっぽくてムカつくし。
全否定されるでもなく、肯定されるわけでもない。
こんなことが許されるのか?
しかもこいつらチームメイト。
これから大会だぞ?全国だぞ?
自分の青春がこれでは、真後ろで繰り広げられている青春がより一層眩しく見えてくる。
こうして、ブルージュの少女…
“私”が同志にひとしきり諭された後。
「大会前に一体感どころか緊張感もなにも無いウチのチームどうなんだろう?」とかなんとか迷想していた時。
その様子を見かねたペールブルーの少女が、溜息を合図に口を開いた。
「ゴチャゴチャ考えんなよ。そもそも、
お前“ふぇ?”なんてキャラじゃないだろ、」
“キャラじゃない”んだそうだ。
言われずとも分かっていた。
その一言で片付けられるほど、自分が白銀の少女と似ても似つかないことくらい。
でもそんなことは関係ない。
彼女に興味があったのは事実だ。
でも目移りまでしたわけじゃ無い。
だから、キラキラのヒロイン的青春は白銀の少女に任せて…
自分は、白銀の少女が歩めない青春を行こう。
くさい台詞は皆無の青春で問題ない。
むしろそっちの方が楽だと思うから。
白銀の少女の青春で通用していることを、自分の青春にまで取り入れる必要はない。
“ふぇ?”は所詮、“ふぇ?”ってことだ。
それ以上でも以下でも無い。
それをチームメイトの4人は分かっている。
それだけで十分だ。
それにこの4人となら、“ふぇ?”も身内ネタくらいになら出来るかもしれない。
しないけど。
期待外れかもしれないけれど。
この私が、
「天。」
藤堂 天だ。