第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
“私”が、直前に覚えた都会語を披露した後。
その一連を見た4人の少女は、各々口を開き始める。
「お前…なに言ってんだよ…」
ペールブルーの少女が、横目で“私”を見ながら、呆れ顔でそう放った。
大会パンフに再び視線を落とすと、その艶やかな髪が、彼女が顔を傾けるのにつられて、肩をなめらかに滑り落ちていく。
「笛がどうしたよ?
試合にそんなもんいらねぇだろ。」
オレンジの少女が、ストローからパック飲料の中身を吸い上げながら、曇りのない瞳で真っすぐに“私”を見据えてきた。
短い前髪の奥から覗くおでこと、マロっぽい眉毛。
クリッとした目が表情豊かに彼女の心情を表している。
「また変な情報ばっかり鵜呑みにして〜
去年も同じような状況で
失敗したこと忘れたの?」
ピンクベージュの少女が、的確に。
それでいて、優しい口調で“私”に言葉を降り注ぐ。
そのミルクティーを思わせる柔らかい髪は、彼女の口から溢れる甘い声と同じくらい甘美なんだろう。
「それは小動物顔の
“純女の子”だけが許されるヤツだ。
乙女の専売特許をお前が奪うな。」
オリーブの少女が、「やめとけやめとけ」と手を横に振る。
なにか可笑しな物でも見たかのように、“私”に向かって細かく笑っていたが。
しばらくすると、再び髪の毛先を気にしだした。
参考までに、4人の少女から意見を賜った“私”は、ロビーの天井を見上げて空を仰いだ。
?「………」
“私”は何も言わない。
口を開けないかわりに、鼻から大きく息を吸った。
その時の頭の中はこんな感じ。
「こんなことがあっていいのか?」