第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●no side● 〜???〜
天本人にしても、他の4人にしても、「思いもよらなかった」というのは事実だ。
全国2位になったと言えど、その結果に満足できず、大会終了後もしばらく落胆していたのだ。
それが優勝校を抑えて準優勝の選手が話題になるとは、夢にも思わなかっただろう。
誰一人として、自分たちのチームが人々の記憶に残るとは期待していなかった。
だから話題が伝わってきて、彼女たちは初めて気づいた。
“二つ名”の存在。
“二つ名”というのは、本名以外についた…“呼び名”的なものだろうか。
“あだ名”という方が、相応しいだろうか。
どちらにせよ、それが付けられていたんだ。
天に。
普段、ちょとやそっとでは驚かない天も、こればかりは驚かないわけにはいかないだろう。
まさか一般人の自分に“呼び名”の様なものが付くなんて。
仮に「心の準備をしとけ」と事前に言われたとしても、驚かずにはいられないはずだ。
実際のところ、生まれてからずっと藤堂 天でしかなかった彼女は、その新しい固有名の発現に多少違和感を感じていた。
それは確かなのだが、心のどこかに「嬉しい」という感情も混じっていたことに、天は気付いていた。
流石の天も、自分を誤魔化せなかったのだろう。
二つ名が付いたことに浮かれる程度には、彼女も幼いなりに可愛げがあった。
しかし、最初に言っておかなければなるまい。
浮かれていたのは、あくまで“二つ名となる固有名を目の当たりにする時まで”だったということを。
天にとっては、さぞ短い“自己肯定感爆上がり期間”だっただろう。
結局のところ、その二つ名。
天のお気に召さなかった。
と言うより…
“気に食わなかった”んだ。