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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち


●no side● 〜???〜


天自身、興味はなかった。


「当時の情報源が悪かっただけじゃないか?」とか、「人伝に聞く程度だったからなのでは?」と言われてしまいそうだが。
天は元から、自分の興味のないことまで進んで理解しに行くような活発な少女ではない。
だから、情報源の優良さなどは、この件にはあまり関係ないだろう。


興味がなかったのは、当時の大人たちがこぞって盛り上がっていた話題が、ことごとく“男バス”に関することばかりだったからだ。
天にとって“男バス”は端から蚊帳の外だったのだから、頼まれても興味なんて湧いてくるはずがない。


夏の大会を終えた天は、事の経緯はどうであれ、そんな事実を前に「スポーツ記者たるもの、少しは“女バス”も追え!“女バス”を!!」と、中学生らしく生意気にも思ってた。


しかし…


あまり知られていないだけで、実はあったんだ。
1つだけ。


人々の興味を“男バス”が牛耳る中、唯一と言っても過言じゃない“女バスの話題”。
埋もれてしまってもおかしくはなかったが、珍しかっただけ、興味を集める程度の力は有していたのだろう。
その甲斐があってか、話題が完全に消えてしまう前に、彼女たちの耳にまで届いた。


けどまさかな。
その取り上げられた“女バスの話題”と言うのが、優勝校の選手でも何でもない自分のことだとは、思ってもいなかっただろう。


長い歴史の中で考えてみても、近年稀に見る輝きを放っていた“男バス”の陰で、それに負けじと必死に戦った若い命。
幸か不幸か、同じ時代に生まれ育ち、全中二連覇を誇る超強豪校が圧倒的な力で他を寄せ付けない中。
同じ舞台の端の方で、己の存在を叫ぶように瞬いた淡い光。


興味を持たれるとしたら…
圧倒的な閃光のその輝きに、あたかも反抗するように煌めいた、その幼い少女だったのだろう。


それが、人々が見てみたいと望んだ、もう一つの物語だった。


それが、天。


藤堂 天だった。

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