第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●no side● 〜???〜
浮かれていた時の気持ちが消えた。
パッ!っと魔法が解けたみたいに。
もれなく、天の自己肯定感も元通りだ。
短期間で2度も変化があったせいで、むしろ損害があったくらいで…
本人は「もっと他になんかあっただろ」と立腹気味に思っていたし、現に愚痴という形で天の口から出ていたかもしれない。
「嫌なのか?」と尋ねられたら、速攻で「イエス」だろう。
コンマ数秒も置かずに、「嫌です」と答える天の姿が容易に想像できる。
しかし、そう予想は付けたものの、天が嫌悪したその“二つ名”。
考え方によっては、「アレで良かったのかもしれない」とも思えてくる。
天が気づいているかは分からないが、天の本名より、変にインパクトがある二つ名(そっち)の方で話題になったことにより。
純粋に優勝を目指す普通の選手だった天に、外界から変な介入が加わることもなかった、とも言えるのだから。
天自身も、いろいろ教えられたことだろう。
それが、良い方に転がるか。
はたまた悪い方に転がるのか。
それは、これから歩んで行く人生の節々で、天自身が身をもって証明することになるのだろう。
そしてまた、“証明しない”という手段も。
同等に証明に値するんだ。
それは、現段階では分からない。
分かることは、「藤堂 天の人生は、未だ続いている」と言うこと。
そして…
決められるのは、藤堂 天本人だけ、と言うことだ。
だから、もう少し覗いてみようか。
彼女の…藤堂 天の人生を。
そして、彼女が嫌悪し、世間が“彼女のもの”としたその名を。
なぜ天は拒んだのか。
なぜ人々は天に与え、呼び、忘れていったのか。
天は、どこに向かっていくのか。
それを、彼女のそばで見てみようか。
そして、中学生の天を、諭し、惑わし、はたまた救ったかもしれないその名前…
本名とイコールにしたい、とは。
恐らく天は、一生思わないだろうが。
彼女の。
天の、新しい名前は…