第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●no side● 〜???〜
ここまでが、彼女が初めて挑んだ全国大会の準決勝までの話。
それは、藤堂 天の過去の一つ。
確実に歩んだ成長の軌跡で、同時に思い出でもある。
その年の全中は、藤堂 天たち2年生の活躍により、彼女たちの中学は決勝に出場。
しかし…
同日に行われた、決勝戦。
過去の対戦相手…もとい尊敬する先輩たちに、「がんばれ」と言ってもらった午後の試合。
そこで、彼女たちの中学は敗北した。
結果、優勝には至らず。
初の全国大会は、準優勝で幕を下ろした。
敗北の要因は…
あるにはある。
明らかな敗因がな。
けれど、それが結果。
敗北は敗北だ。
追求せずとも、それが変わらないことなのは分かり切っていた。
彼女たちは負けた。
しかし、それは彼女たち5人が中学2年生の時の話。
天たち2年生にはあと1年、チャンスが残されていた。
文字通り、再び全国に挑むチャンスが。
しかし、“残されていた”とは言うものの。
例えそれが分かっていても、やはり大会が終わった直後は、それなりに落ち込んだことだろう。
スタメンだった彼女たち2年生は…天は。
勝ち取った全国2位の実績。
対して、優勝を掴めなかった後悔。
日本の夏特有の暑さは、9月に向けて徐々に下がってはいたけれど。
冷めにくい東北の熱気を抜きにしても、“不遜”と“謙遜”の間で、中学生の心は揺れてもおかしくはなかった。
しかし、そのどちらにも足を掬われることなく、天たちは練習を再開した。
1年後の…高学年として挑むことになる全中のことを考えたら。
多少驕っていたとしても、立ち止まっている余裕なんてなかったのかもしれない。
彼女たちの目線は既に、翌年の全中へと向いていた。
来年こそ、決勝で勝利をおさめ。
全国1位の座を獲得する。
自分たちの手で、確実に。
彼女たちは誰一人として、その権利だけは他の誰にも渡すつもりはなかった。
こうして、田舎の若人が士気を高め、新体制で全国を目指し始めた傍ら。
そんなことも知らない都会の人間は、全く別の話題で盛り上がっていた。