第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
そんな感じで、可愛らしいシティーガールが、これほどまでに多用していたのだから、間違いなく流行語なんだろう。
都会の流行ってのは、よく分かんないな?
もれなく意味もよく分からなかったけど、そんなの関係ない。
即、私の辞書に新規追加された。
チームメイトたちが口々に、「ビックリした」、「ビックリした」なんて言うから。
状況からして、使うとしたら今しかないと思って口をついた。
「やっと使えた!」と内心思っていたんだけどな。
「「 だからそれ流行ってねぇーって!! 」」
『え』
またしても、チームメイト総出で全否定されてしまった。
まぁ…いいか。
違うなら違うで…使い方もよく分かんねぇーし。
今はそれよりも…
『腹減ったぁ〜〜〜…』
どんな都会の日常よりも。
どんな流行りの言葉よりも。
今の私には、マネージャーが持って来てくれると言う、弁当の方が何倍も魅力的なんだ。
再び空腹感を露にしながら、数歩先を行くチームメイトまでの遅れを取り戻そうと、少々足早に会場の廊下を蹴り上げて。
その4つの背中に向かって、私は駆け出したんだ。
「なぁ、忘れないうちに言っときたいんだけど」
その時。
もう少しで追いつく、という時に…
こちらに視線も向けずに話し始めた愛華との、
「試合の時話した花のことだけど」
この時に交わした、あの話…
『あーはいはい、
残念なことにちゃんと覚えてますよ〜』
なにか…
なにか、大切なやり取りをした気がするんだけど。
「いや、そうじゃなくて」
それが何だったのか。
どうしてか。
私はよく、思い出せないんだ。