第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
いつもであれば、ボイコットの1つや2つ決め込んで真反対に歩き出してやるところなのに。
決勝を間近に控えた私の頭は驚くほど冷静で、今はただ淡々と、他の4人の背中を追うことだけを考えていたんだ。
だから、塩を塗られ続けるなり、抉られるなりを覚悟して。
後に続こうと、視線は地面に向いたまま、一歩前に踏み出した、
『ん…?』
…その時だった。
私の頭は、たった一つの文字に支配されることになったのだ。
それは、
『“ビックリ”…?』
チームメイトたちが、意識してか無意識にか口にしている言葉だった。
なんの特別感もないはずのその言葉に、何か突っかかりを感じた私は、遠いような近いような記憶の中を辿り。
なぜここまで、この言葉が気になるのか…
その答えを探し始めたんだ。
・・・・
そして、以外にも近かったその答えにたどり着いた瞬間、
『は…?!』
私は素早く息を飲んだ。
そして、私の前を行く4人の背中に向かって、この大発見を口に出したんだ。
今はただ、出来るだけ大きな声で…
『“はにゃ?!”って
こう言う場面で使うのが正しいのか?!』
と、私に向けたその後ろ姿に向かって、声を張ったんだ。
なのに…
「「 だからそれ流行ってねぇーって!! 」」
『え』