第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
しかし、「一難去ってまた一難」とはよく言ったものだ。
その証拠に、そこから先は酷い言われようだった。
「いつものことだけどさ〜
ビックリしたよ天〜」
呆れたように放った詩織のその言葉を皮切りに、他の連中も口を開けば、まぁ~言うわ言うわ…
やっとの思いで羞恥の山を越えたと思ったのに、今度はチームメイトたちから好き勝手言われる羽目になってしまった。
「お前は腹の虫も手懐けられねぇーのかよ?!」
とか、史奈にまで言われたときは、羞恥を超えて一層のこと屈辱的だった。
「はっっっずかしいよな〜今のは…」
という言葉に釣られるまま紗恵を視界にとらえると、肩を小刻みに震わせて静かに笑っていた。
それを見たせいで、大爆笑された時とはまた違う類のダメージを負ったような気がする。
「ほんと。マジでクレイジーだよな、
天(お前)の生体…」
というのは、正真正銘愛華の本音だろうから困る。
“クレイジー”というのを撤回させるために、これからどれだけ骨が折れる思いをすればいいのだろう、と。
それを考えるだけで頭が痛くなりそうだった。
チームメイトたちのそんな対応が、私の羞恥を駆り立てたのは間違いない。
私がいくら、「気にするな。気にするな。」と心の中で唱えても。
それに反して、俯いた顔には着々と熱が集まってくるんだ。
『…悪かったな!いつも腹空かせててよ!!』
こいつらは私のチームメイトで、同じ志を持って、同じ敵がいるはずなのに。
揃いも揃って、決勝前に私のことを羞恥で殺すつもりなのかよ…
そんな私の気も知らず、愛華、史奈、紗恵、詩織の4人は、人を馬鹿にするだけ馬鹿にして、再び歩行を開始したんだ。
未だ「あぁ~ビックリしたビックリした~」と繰り返しながら私の前を歩くチームメイトたちに、傷に塩を塗られている気分だった。