第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
冷や汗というものは、こういうタイミングでも出るもんなんだな?
「こうなることを全く予想していなかった」とは言わないけれど、まさかこんな大切な場面で、大々的に披露することになるとは考えていなかった。
・・・
私の中の羞恥は、それの自覚と共に倍増し。
体中の毛、一本一本が逆立ち、それを冷気に逆撫でされているような不快感があった。
目には見えない無数の視線が背中に集まるような。
途端に自分が、何か悪いことをしでかした人間であるかのような、嫌な感覚が私を包んだ。
だから、
『さ…さーせん…』
つい取り乱して、「なんで謝っているのか」とか「何に謝っているのか」とか、全く考えることなく平謝りしている図になり下がった。
そんな内情を汲み取ってくれたからなのか。
はたまた、私の醜態が見ていられなくなったからなのか、
「ごめんなさい、うちのエースが
空腹でぶっ倒れる前に…失礼しますね?」
と、横にいる愛華が助け舟を出してくれた。
はたして、本当に助け舟になっているのかは分からないが、私としてはもう何でもよかった。
とにかく「早くこの場から逃げ出したい」と言う、その考えしか頭にはなかった。
すると…
今度は、「あはははははは!!」という大きな笑い声で、私たちの周りの空気が揺れたんだ。