第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
他人には聞き取れないほどの小さい声で、言葉を溢したブルージュの選手は、次の瞬間。
それまでずっと離さずにいた白銀の少女への視線を、ついに断ち切った。
ブルージュの選手は踵を返して、白銀の少女がいる方向と逆。
つまりは自分の真後ろに振り返り、口を開いた。
?「なぁお前ら。知ってたか?」
振り返ったその視線の先には。
ブルージュの選手が纏うそれと、全く同じジャージを着た少女が4人。
ブルージュの選手の声に釣られる様に、少女たちは各々の動きを止めて視線を向けた。
「「 ん? 」」
4人の視線を集めたブルージュの選手は、自信たっぷりにこう告げた。
?「どうやら東京では、
“ふぇふぇ”が流行ってるらしい。」
「「 は? 」」
思わず反応する、4人の少女。
大会パンフを広げる、ペールブルーの少女。
ベンチに座ってストローを咥える、オレンジの少女。
その横でケータイを握る、ピンクベージュの少女。
髪の毛先を気にする、オリーブの少女。
目の前に立つブルージュの選手が、前触れもなく放った言葉に対して、一斉に疑問符を投げ返した。
そこには、困惑の表情を浮かべている顔が、やはり4つ。
スポットライトに照らされた表舞台の漏れ日を背中で受けるブルージュの選手と、頭上に影が落ちた4人の少女。
5人の周囲にだけ。
違う時間が流れ出した。