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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第3章 表があれば裏がある


●?? ??● 〜東京体育館〜


その頭髪は、黒髪の中に紫がチラつく。
短くカットされたその髪は、試合時のパフォーマンスの向上を図っているようで、その人物のスポーツに対する熱意を表しているようにも見える。


首元には、スポーツ用ヘッドバンド。
後ろ髪に比べて長い前髪を、固定するためのものだろう。
今はただ首からぶら下がっているだけで、その役割を果たしていない。
しかし、一度首元から額まで持ち上げて、髪の生え際で止めれば。
その視界が一気に開けるという策略だろう。


ゼリー飲料を飲み終えたようで、ポケットから手と共にキャップを出すと容器の蓋を閉める。
徐々に中身がなくなって、容器が平たくなっていくその間、視線だけは白銀の少女に注がれていた。


彼女を見つめたその目は、片方が前髪に隠れていて、外からは見えない。本人からは、こちら側が見えているのか。それは確かめようがない。


もう片方の目は、狭い目頭をスタートに、上向きに弧を描いて目尻まで伸びる二重。
切長のその瞼の奥には黒い瞳。
光を取り込んで、時折り紫がギラつく。
恐らく、隠れている方の目も同じなのだろう。


太陽のような輝きを放つ、孤高の少女を“白銀の少女”と呼ぶのであれば。


対して、人を寄せ付けない雰囲気のこの人物は…
“ブルージュの選手”、とでもいうだろうか。


ブルージュの選手は、なにを思って。
その目で白銀の少女を見つめていたのか。


?「と…ぉ………ん……げ……ぁ。」


小さく口にしたその言葉は、白銀の少女に向けた、その視線の意図と同じように。
誰にも理解することは出来ない。

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