第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
全選手の視線を集めている孤高の白銀の少女に、他の選手と同じように釘付けになっている人物がもう1人。
その人物は、すぐ横のベンチが空いているにもかかわらず、座ろうともせずに真っ直ぐに立っている。
視線も顔も、体までも白銀の少女に向けて。
ゼリー飲料を口に咥えて、ストロー状の吸い口からちまちまとゼリーを吸い上げている。
栄養補給中であろうその後ろ姿は、文字がプリントされたジャージ。
その文字というのは、おそらく学校名で。
周囲の選手となんら変わりのない、大会出場校の選手の1人だ。
右腕にはビニール袋がぶら下がっており、両手はジャージのポケットに突っ込んでいる。
口に咥えた容器を支えるものはなにもなく、つい心配になるが、落ちないとこを見ると歯でしっかり固定しているらしい。
いかにも試合前の選手らしい。
その装いを抜きにしても、人がひしめくこの場に堂々と立つその姿に、「部外者」という言葉は相応しくない。大会関係者なのは一目瞭然だ。