第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
目の前に現れた、準決(直前の試合)の対戦校の選手たち。
記憶に新しいその面々は、ジャージを身に纏った初めて見る様相だった。
しかし、ユニフォームと同じ配色のそのジャージは、確かに過去対戦した相手であるという事実を、私の鼻先に突きつけてきたんだ。
それを目の当たりにした私たちはというと…
「あなた方…
さっきの対戦校の」
「おぉ〜お疲れですセンパーイ!!」
「な…なんだ!決闘か?!
仇討ちか?!仇討ちなのか?!」
「あぁ~やっぱりワタシですよね?!
ほんとごめんなさい!
馴れ馴れしくてごめんなさい!!」
どこまでもキャプテンの愛華。
コミュ力の高い紗恵。
通常運転の史奈。
人見知り常時発動の詩織。
そして、その様子を後ろから眺める私。
私たち5人の前に、さっき試合で負かしてしまった相手が現れた。
これで理由がないわけがない。
そう思っていると…
キュッ…っという、光沢のある床を靴を介して踏み締めるような音が、幾つも重なって私の耳に届いた。
それと同時に、私たちの歩みを止めた眼前の戦士たちが、こちらに脚を動かし始めた。
声のひとつも出さずに。
確実に近づいてくる、暗いトーンのジャージを身に纏った集団。
ただならぬ空気を纏っていたのは、私の勘違いではないのだろう。
だから私たちも警戒した。
同数の試合を勝ち上がり、決勝を目前とした2つのチームが、互いの“最大級”をぶつけ合った、コート上での心持ちとは全くの別物を抱いて。
これは“闘争心”なんかじゃない。
完全なる“敵意”だ。