第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
愛華の腕によって歩みを止められてしまった史奈と紗恵は、文字通りバランスを崩して倒れ込んでしまった。
その結果、詩織は後ろ向きに倒れ込む紗恵を、両腕で抱き止めて。
一方で私は、史奈を額で受け止めることになってしまったんだ。
全ては行き違いから発生した事故だ。
誰が悪いわけでもない。
しかし…
愛華がそこまでして、私たちを止めた理由はなんだ?
愛華が見たものは、一体なんなんだ??
「いざって時!下敷きになるのは愛華なん…」
愛華の隣でそう口にしながら、再び進行方向を見つめた史奈。
それとタイミングを合わせるように、私も同じ方に視線を向けたんだ。
「ん〜??」
「あれ?」
この時ちょうど、私の隣で倒れかかっていた紗恵が、詩織に体勢を立て直してもらっていた。
そして2人とも、私たち3人にならって前方を見つめ直した。
この時になって、私たちは全員気づいたんだ。
なぜ愛華が、歩みを止めたのか。
「あなた方…」
・・・・
確かに、これなら立ち止まりたくもなるか。
そう納得してしまうくらい、そこにいたのは無視することの出来ない存在だったんだ。
・・・・・・・・・
そこにいたのは、見たことのある配色のジャージを身に纏った複数の影…
そしてその“見たことのある配色”というのは、「別の形で一度見た経験がある」ということで。
“別の形で”というのは、“別の様相で”ということで…
・・・・・・
一瞬でチームカラーであると判断できるその色合いは、用済みになった私の“闘争心”ってものを再熱させるようで。
汗を拭いてサッパリした試合後の身体を、変に熱らせたんだ。
私たち5人の目の前には…
「さっきの対戦校の」
さっきまで、コート上で戦っていた相手がいたんだ。