第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
痛みや戸惑いを置き去りに、事故現場を抑えられなかったことに対して焦りすら感じた。
私が目を瞑っていたがために、迷宮入りしてしまうのではないか、と…
だけど、あまり心配する必要はなかったのかもしれない。
なぜなら、額を撫でながら、落とした視線を再び上げた時、
「いったぁ〜…!!」
史奈も、私と全く同じ行動をとっていたから。
そしてもう一つ、
「危ないな〜!紗恵大丈夫?!」
「うぉぉ〜ビビった〜!!
ナイスキャッチ詩織〜♡」
その会話に釣られて横に視線を送ると。
実際なら、自分の脚では絶対に立っていられないような体勢の紗恵を、後ろから支えている詩織がいたから。
そして、さらに言えば。
私たち4人の前方…
そこには、掌をこちらに向けた状態で、両手を大きく広げている愛華がいたんだ。
まるで、後ろから来る“何か”を止めるかのように、その腕は湾曲を描いて…
現場検証の結果、何が起こったのかは火を見るよりも明らかだ。
だいぶ引いてきた、額のこの痛みは…
私と史奈。
そして紗恵と詩織が、こんな目に遭っていることの元凶は…
「急に止まんなよ?!」
愛華だ。