第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「例えばね〜
マネが泣きながらウチに寄ってくんじゃん?」
『いや…“じゃん”って言われても知らねぇーよ…』
「んで“天先輩にいじめられたんです~
紗恵先輩、助けてください!!”
…って言われたりしたら、
ウチ絶っっっ対信じちゃうもん!!」
そう言い切ると紗恵は。
やっぱり私に向かって、とびっきりの笑顔を向けてくるんだ。
『なんでお前みたいな奴が
一丁前にキラキラ背負ってんだよ…?!』
こういう天邪鬼は紗恵の性格だから、もう諦めるしかないとは分かっている。
だけど、歯を見せていい顔で笑いかけるにしては、今の“トンデモ発言”は地雷過ぎる。
私らが一緒にいる年数と、互いへの理解を考えた時に。
ついプチンッ!ときてしまった私は、「それが冗談であること」を知った上で、言い返したくなったんだ。
『“幼馴染”で“チームメイト”って
前提を持ってしても私への“信頼”みたいなのは
皆無なのかよお前には…!』
「いや〜ん、そんなに怒んないでよ〜」
そう言って紗恵は、自分の両手で頬を包み込み。
身体をユラユラと左右に揺らしてみせたんだ。
反省の色の見えない紗恵に、もう一つ何か言ってやろうとした。
その時…
「うっせぇーんだよお前ら!!」
私たちの先頭を行く愛華が、凄い形相で振り返ったんだ。
その声に、驚いたかハッとしたかは各々違うんだろう。
しかし、私を含め4人の意識が、愛華の方に向いたのだけは分かった。
それを感じてか、愛華は再び進行方向に向き直ってから話し続けた。
「少しは周りへの配慮を」
と、愛華が何かを言い切る前に。
「お前ら止まれ!!」
愛華(本人)がそれを上書きするように、声を上げたんだ。
「「 うっわ?! 」」