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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


初めは、そんなつもりは全然なかったんだけど。
いつだったかマネージャーが、「どうせだから一緒に洗いますよ」と言ってくれたんだ。


けれどヘッドバンドは、ユニフォームと違ってあくまでも私物だし。
一緒に洗ってもらうのはなんか違う気がした私は、「気持ちだけで十分だ」としばらく渋ってた。


でも結局、どういう経緯だったかはもう覚えていないけれど。
ユニフォームとヘッドバンドを一緒に渡すのが、今となっては逆に当たり前になってしまったんだ。


だから、試合が終わったその次の日には。
ヘッドバンドは、見違えるほど綺麗になって私の手元に返ってくる。
よく知った柔軟剤の香りで。


それがあるからってわけじゃないけれど、ありがたいと思っている。


だからこそ、「無理はしないでほしい」とは純粋に思うし。
今ここで、マネージャーに倒れられたりでもしたら、本当に困ったことになるのは重々承知している。


だからこそ…


だからこそ、弁当を持ってきてもらったその時は。
マネージャーには、ちゃんと「ありがとう」って言ってやらなきゃ、って。


「おい天!」


…そう、思っていたのにな。


「お前マネに“弁当早く持ってこい”って
 脅したんじゃねぇーよな?!」

『脅すってなんだよ馬鹿!』


まぁ、所詮…


こういう扱いしてくるのが。
うちの選手陣(こいつら)なんだよな…

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