第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
この感情を言い表せる言葉を知るほど、私は賢くはない。
決めつけていいほど、私は世界をまだ知らない。
だから…
この感情に、名前を付けるのはまだよそう。
今はただ、こんなにも眩しい。
輝かしい。
それを見てると、無条件に目の奥が熱くなるような。
そんなひと時を。
“栄光の目前”を。
仲間と共に、進んでいこう。
それ以外のことは。
その後からでも、何も遅くはないだろうから。
少々、後回しにし過ぎてることも、思い当たらないことも無いんだ。
けれど、この際だ。
いっそどこまで後ろ倒しに出来るか、世界記録に挑むつもりで後回しにし続けてみるのもありだろう。
そもそも、いつから始めたのだったか。
もう覚えていない程、私はずーっとバスケをしている。
今更何かを後回しにしたって、文句を言われる時期はもうとっくの昔に終わっている。
他にやりたいこと、とか。
やらなきゃいけないこと、とか。
全くないわけではないんだ。
単に、バスケをプレイすることが、今の私には“一番”ってだけで。
私にとっては、全てを決定する理由は、それだけでも十分なんだ。
・・・
私がそんなだからなんだろうけど、「そんなにバスケばっかして、プロにでもなるつもりなの?」と、昔からよく聞かれてきた。
でも正直、周りが思っているほど、私にプロになる夢なんて全くなくて。
かと言って、他に明確な志を持っているわけでもないんだ。
だからなのか、よく聞き返される。
「じゃあどうしてバスケをしているの?」って。