• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


私はいつでも、仲間たちの姿に心情を揺らがせてきた。


その笑顔に。
その言葉に。
そして、その生き様に。


試合終了時に、必ずと言っていいほど私の中で入り混じる“安堵”と“恐怖”に、つい足元を掬われそうになる。


しかし、そんな時は。
自分の心が揺らいだ時は。


私はやはり、仲間を見つめる。


その姿を見て、思い出すんだ。
そして考えるんだ。


「私の目に映るこの光景は、なんて綺麗なんだろう」と。


眩しい…その姿が。
4人から目を逸らせない。


詩織も、紗恵も、史奈も、愛華からも。
そんな、共に戦う仲間の姿。
後にも先にも、私と共に生きていく存在。


今は物理的にくっ付いているけれど。
本来であればそんなことをせずとも、私たちは繋がっている、と私は思っている。


例えるならば。
こう…自分の胸から、長い長い紐が出ていて。
それがみんなの方まで伸びていく…


伸びて…伸びて…


キュル…と言う音を立てて、繋がるんだ。


私から出ているこの紐の先。
みんなの中に。
それぞれの胸(ここ)に入っていく…


言葉の綾とか、そんなのでは決してなく。
本当に、体のどこかが繋がっているような、そんな感覚。


だから、みんなが前を行けば。
私は糸に釣られて、胸が前に引っ張られる。


苦しくはない…
寧ろ、落ち着きを取り戻した心は、何かに駆り立てられる。


「追いかけたい」。
「着いていきたい」。
「一緒に、走っていきたい」。


この衝動は…


本来であれば、相反する感情のはずの“安堵”と“恐怖”。
それを、乗り越えた先に待つ、私を仲間の元へと駆り立てる、新たな感情…


その名前は…


今の私には、分からない。

/ 276ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp