第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
私はいつでも、仲間たちの姿に心情を揺らがせてきた。
その笑顔に。
その言葉に。
そして、その生き様に。
試合終了時に、必ずと言っていいほど私の中で入り混じる“安堵”と“恐怖”に、つい足元を掬われそうになる。
しかし、そんな時は。
自分の心が揺らいだ時は。
私はやはり、仲間を見つめる。
その姿を見て、思い出すんだ。
そして考えるんだ。
「私の目に映るこの光景は、なんて綺麗なんだろう」と。
眩しい…その姿が。
4人から目を逸らせない。
詩織も、紗恵も、史奈も、愛華からも。
そんな、共に戦う仲間の姿。
後にも先にも、私と共に生きていく存在。
今は物理的にくっ付いているけれど。
本来であればそんなことをせずとも、私たちは繋がっている、と私は思っている。
例えるならば。
こう…自分の胸から、長い長い紐が出ていて。
それがみんなの方まで伸びていく…
伸びて…伸びて…
キュル…と言う音を立てて、繋がるんだ。
私から出ているこの紐の先。
みんなの中に。
それぞれの胸(ここ)に入っていく…
言葉の綾とか、そんなのでは決してなく。
本当に、体のどこかが繋がっているような、そんな感覚。
だから、みんなが前を行けば。
私は糸に釣られて、胸が前に引っ張られる。
苦しくはない…
寧ろ、落ち着きを取り戻した心は、何かに駆り立てられる。
「追いかけたい」。
「着いていきたい」。
「一緒に、走っていきたい」。
この衝動は…
本来であれば、相反する感情のはずの“安堵”と“恐怖”。
それを、乗り越えた先に待つ、私を仲間の元へと駆り立てる、新たな感情…
その名前は…
今の私には、分からない。