第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
『私は「こいつら何とかしろ」つったんだ!
お前まで試合以外だとポンコツなのかよ?!』
「なんでそこまで言われなきゃならねぇーんだ!
だったらお前がやれってんだ!!」
と、このような感じで、唯一対面で向き合う私と愛華は容赦なく言い争う。
…にも関わらず。
他の連中は、相変わらず楽しげなんだ。
「みーんな!ほんと大好きだよ~!!」
「やだ~詩織ってば今度は愛の告白~?」
「“愛の告白”?それがゲームの名前か??」
『喋んなって!』
確かに、いくら言っても聞く耳を持たないこいつらに。
「耳元で喋るな」って言っても、無駄なことなのかもしれないな。
だから、唯一耳を傾けると期待できる奴に。
私は再び話しかけた。
『これも“想定内”か?
お前のシナリオには…
こんなことまで書いてあったのかよ…』
「即興は苦手なんだよ…!」
私の皮肉に対して、独特な言葉で言い返してきた愛華。
分かるような分からないような、微妙な掛け合いではあったが。
恐らく、「馬鹿を台本に縛り付けることは出来ない」とでも言いたいのだろう。
そりゃ、台本ありきで行動する奴が、現実(リアル)で“トラブルメーカーズ”に勝つなんてこと、出来るわけがない。
この状況に陥ったのも、ある意味納得した。
でも…
「愛は〜ど〜こからやってくるのでしょ〜♪」
・・・
『そこでhi●omi熱唱すんな!!
うっせぇー!!』
私が話した内容だけ、見事に聞き流す“突発性難聴”だけは…
やっぱり納得いかない。