第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
「もぉ…僕今から心配でしょうがないよ…」
いつの間にか、図らずもチームメイトの面倒を見ていた白銀の少女は、既に疲労を感じ始めていた。
それもそうだろう。
彼らの元に駆け寄ってきてからというもの、怒鳴られたり怒鳴り返したり。
持ち上げられたり揺さぶられたり。
抱きつかれたり引っ張られたり。
これで「疲れるな」という方が無理な話しだ。
「心配で自信無くなってきちゃった…」
溜息と共に視線を落とした白銀の少女。
けれど、すぐに頭を持ち上げることになった。
「ばか!なに言ってんだよ!」
「へ?」
その声に釣られるように視線を上げると…
「お前はそんな柔じゃねぇだろ?
お前のことはオレらが1番知ってる!」
瞼を開ければ、そこには仲間がいる。
乱暴ながら、それでも大切なことを伝えようと。
いつも通りの尖った口調で。
不器用ながらもその眼差しだけは、少女をまっすぐに見据えていた。
「そうっスよ!絶対優勝できるっスよ!
なんてったって、オレたちなんスから!」
また一人、仲間の姿が見えた。
いつもと変わらぬ笑顔を見せて。
エネルギッシュで、追いかけるのも一苦労だけど。
その明るさを少女は頼りにしていた。
「お前がいれば、百人力だからな。
だが、オレも負けない。」
自分の側にはいつだって仲間がいる。
個性的で手のかかる男の子だけど。
負けず嫌いで、意地っ張り。
だけどたまにその優しさが、抑えきれずに漏れ出していることを、少女はよく知っていた。
「君のおかげでここまで来れた。」
大切な人たち。
全員をその視界に収めた。
最初からこうだったわけじゃ無い。
仲間になるまでにいろんなことがあった。
決して楽ではなかったけど。
その分、今はとびきりの幸せを感じられる。
だから少女は「みんなでここまで来たんだよ」と、心の中で訂正した。
「信じてるよ僕たち全員。
だから…」
キャプテンの男の子は、目の前にいる白銀の少女と目を合わせて微笑み。
最後に一言…
「一緒に頑張ろう。」
仲間からの言葉に、少女の瞳がきらりと光る。
瞼を大きく開けば左右で色の違う瞳に、更に光が注ぎ込まれる。
先程まで感じていた疲労は。
既にどこかへ行ってしまっていた。