第3章 表があれば裏がある
●?? ??● 〜東京体育館〜
どんな褒め言葉も、口説き文句も。
白銀の少女には届かない。
気がついていない、と言った方が正しいのかもしれない。
やっと男の子たちから解放された白銀の少女は、オッドアイの目で男の子たちを見上げた。
一見、対立しているのかと思わせるような絵面だが、少女とその向かいにいる男の子たちの体格差が大きすぎて、ちっとも怖くない。
少女渾身の仁王立ちも、意味を成していなかった。
「もぉ!みんな緊張感ないんだから!」
そう言って白銀の少女は腕を組んでみせた。
「まだ開会式にもなってないのに、
怪我でもしたらどうするの!!」
「「 (怒ってもかわいいっ.../////) 」」
ほらね?
全く怖がられていない。
男の子たちに、反省の色が見えないからか。
もしくは、散々振り回されたことに純粋に怒ったからなのか。
白銀の少女が、次に口にした一言で。
彼女を中心とした周囲の空気を、一瞬で凍てつかせた。
「万一僕が試合に出られなくなったら
どうするんだよ!
それでも良いって言うの?!」
「「 それはダメだ!/っス! 」」
切り返しは早かった。
思った以上に。
少女の仕草。生み出す表情。
その一つひとつで、和みに浸っていた男の子たちだったが。
全員が目をカッ!っと見開いて、焦ったように少女の言葉に反応した。
心なしか、腰も低くなったように見える。
それは、先程までの中学生らしい青春団欒が嘘だったのかと思わせるほどに。
白銀の少女に、戦略があってか無くてか。
それは判断のしようがないが、男の子たちに対する効果だけは抜群だったようだ。
「わ…悪りぃ。」
「柄でもなく、はしゃぎ過ぎたようだ。」
「ごめんなさいっス〜
だから嫌いにならないで欲しいっス!」
そう言って男の子たちは、口々に謝罪の言葉を白銀の少女に向けた。
「ほんと!僕がいないと
ダメダメなんだから!」(((プンスカ
その横で…
さすがは主将、とでも言えるのだろうか。
キャプテンの男の子だけ、一連の様子を見ながら眉を顰めて小さく笑っていた。