第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
仲間を見捨てた裏切り者。
知り過ぎた脇役。
研究する博士。
集団を抜け出すカップル。
言い方は違えど、根っこは同じだ。
主人公でない限り、決まって悲惨な結末を背負わされ、命を落とす存在。
それがよく見る展開。
聞こえ良く言えば“王道”。
親しみを込めれば“定番”
皮肉にするなら“ベタ”。
だから仮に、私が心の中で割と大きめに叫んだ、この「やっと助かる」も。
これが所謂、ベッタベタなフラグに値するものなのだとしたら…
「お前ら!!そこら辺にしと」
「ほらほら!愛華も!!」
「んだよ愛華も交ざりてぇーのか?」
物語のフラグよろしく。
生存者(私)の希望も虚しく、割と悲惨な最期を迎える羽目になる。
現に私は、その“希望”なるものが。
目の前で無残に崩れるのを、目の当たりにした。
それは、直前。
私から助けを求められ、距離を詰めた愛華が、こちらに何かを言おうとした時。
私の両サイドを固める詩織と史奈からも、近づいてきた愛華の姿が見えないわけもなく。
だからなのだろうか…
2人は、自らの視線を愛華に向けるのと共に。
それまで、私の顔周りに回していたそれぞれの片腕を。
今度は、愛華に向かって伸ばしたんだ。
それだけでも、“何をしようとしているのか”なんて明白だし。
例え、史奈が今、文字通り“地に足がついていない状態”なんだとしても。
もともと手足の長い2人を相手に、愛華が勝てるわけもない。
だから愛華は、いとも簡単にその両腕を詩織と史奈に掴まれてしまい。
2人が引き寄せる力のままに、私の方へと近づいてきた。
そして、多少荒っぽく、
「『 いっっってぇ…!! 』」
私の胸部に、飛び込んできたんだ。