第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
さすがにもう、我慢の限界だった。
『愛華…愛華…!』
だから、最後の頼みの綱に助けを求めた。
横を詩織。
背後を紗恵。
そして、その更に横を史奈に囲まれた異様な状態で。
『こいつら…
こいつらなんとかしてくれ…!』
そして、その愛華はというと。
私の馬鹿力の被害者となり、それに対して「手加減しろ」と言ってきたその時から。
今でも変わらず、私の前に立っているんだ。
「なんなら、もっと早くに助けを求めればよかった」とさえ思った。
なぜなら、私が助けを求めてから時を置かずに。
愛華は「ったく…」と言いながらも、こちらに足を運んできたから。
そして、私たちに近づくと、こちらを見つめて口を開いたんだ。
それを見た私は、今最も求めているセルフが、愛華の口から馬鹿どもに降り注ぐことに期待を寄せた。
「お前ら!!そこら辺にしと」
確かに、気は早まった。
それは認めるけど…
「やっと助かる」と思ったのが、マズかったのだろうか?