第5章 栄光の目前 　〜決勝トーナメント準決勝〜

●藤堂 天●　〜東京体育館〜


戦況は変わらず、試合はこちらの守備でスタート。


ついさっき、史奈がシュートを決めたゴール下から、ボールが自陣に運ばれてくるのを見守る。
もちろん、チャンスがあればいつでも取りに行く。


『ん？』


そう思っている横で…


「ちょ…なんでだよ？！
　なんで真っ先に止められんの？！」


視界の端で移動中のボールを捉えたまま、横を見ると…


史奈が自分の進路を、相手選手の1人に妨害されているのが見えた。


さっき、史奈のノーマークからのスリーポイントシュートを懸念してなのか？


そう考えた後に、確信した。
きっとこの先、オフェンスディフェンス関係なく。
相手チームのうち1人は必ず、史奈にべったりになる。
恐らく終了時まで、ずっと。


最終クォーターに入ってからも、点が確実に開いているこの状況で。
シューターである史奈に、ボールを触れさせないつもりだ。


スリーポイントが決まれば、事実一気に点差が開いてしまうし。
何よりも、チームの士気を保つためには、スリーを取られるわけには、どうしてもいかないんだと思う。


こう言っちゃなんだけど、立て続けに6点も失点しているというのに、相手は未だに心が折れていない。
対戦校ながら、凄いと思ってしまう。


「くっそぉ〜…！！」


だけど、「凄い」と思っているのは私だけみたいだ。
少なくとも史奈は、そう思っていない。


なんとか相手のマークを振り切ろうと必死だ。


これは…まずい予感がする。