第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
だから、ボールが史奈の手を離れ、ゴールリングに入ったのを見届けると同時に。
私は自陣のゴール下に振り返った。
そこには、自分が繋げたボールが、相手チームのゴールに入っていったのを見届けて。
満足そうに笑う詩織がいた。
安心してんのか、喜んでんのかは分からない。
だけど私にとっては、綺麗に整ったその顔が笑顔に変わった事実が。
ゴールが決まったことと同じくらいに、私を安心させたんだ。
…って。
呑気に安堵したのも、束の間…
『いってぇ?!!』
ドン"ッ!!と言う音と共に。
私の背中に、よく知った鈍い痛みが広がった。
「どうだ!今度は見てただろ?!
あたしのパーフェクトフォーム!!」
そうだった。
史奈はシュートが決まるたびに、私の背中に一発入れるんだった。
『ゔ…ゔぅ…』
さっきのこともあって、この場で再び言い合いになってもおかしくはなかった。
現に、“一旦”保留にしただけのつもりだったし。
だけど、今度は喧嘩にはならなかった。
…って言うのも。
今回は、まぁ…
元祖馬鹿に、背中を晒した私が悪い。
第4クォーター、残り2分57秒。