第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「あたしのフォーム見ろよ!!
フォームがよ!最高だったんだフォームが!」
『フォームフォームうっせぇーよ!
覚えたてでもねぇーくせに!!』
でも結局、馬鹿になに言っても無駄だし。
これ以上言い返しても、私の精神疲労に繋がるだけだから、「もうこいつに反発するのやめよう」と思った。
だから…
『ほら自陣戻んぞ元祖馬鹿!』
「最後にせめて悪足掻きの1つでも…」と思って。
人によってはチクリ…ときそうな悪口をサラッと言い残して。
私は史奈に背を向け、自陣に歩き始めた。
なのに…
『いってぇ?!!』
直後、ドン"ッ!!と言う音と共に。
私の背中に、さっきと同じ痛みが広がった。
鈍くて沈み込むような衝撃。
鋭利じゃなくても痛いことに変わりはない。
は?2回目?!
スリー1本で、なんで私が2回も叩かれんの?!
『史奈…テメェ…!』
そのことにイラッ!っときて。
私は再び、勢いよく振り返った。
『いちいち無駄に強ぇんだよ!馬鹿!元祖!
元祖馬鹿!!』