第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「あの様子だと、ウチら
次も下っ端になる可能性大じゃね?」
『仕方ねぇーだろ、さっき詩織のこと
ゴール下に引き止めちまったんだから…』
キャプテンの背中を追う、詩織の背中を見て。
F(フォワード)である紗恵と私は、少々の不満と共にそんなことをボヤいていた。
その時…
突然、自分の背中からドン"ッ!!と言う重低音が発せられた。
もちろん、言葉の綾ってだけで“自発的”なものではない。
その音は、骨伝導で伝わったのか。
それか正規ルートで、耳から入って鼓膜を揺らしたから聞こえたのか。
はたまた、その両方なのか…
正解が分からないうちに、背中の一部に鈍い痛みを感じた。
『いってぇ?!!』
その痛みは形状は、よく知った形だった。
1つの広い“面”と、そこから飛び出た5つの“線”。
2次元的なその形は…
“もみじ”…?
いや違うな…
これは…
『おい強く叩き過ぎだ馬鹿!!』
史奈の手の形だ。