第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「やっぱりワタシの出番
なかったじゃ~ん?!!」
そう言って、不満げな顔で近づいてくる詩織。
分かりやすく「自分不満です!」って顔をしてたよ。
敵のインサイドの守備が堅い時に、史奈の機嫌上げると、必然的に詩織の機嫌が下がるこの傾向。
いつも思うけど、どうにかできないもんかね??
「チーム全体が納得できる方法」なんて、らしくもないことを考えていた時だった。
「“用心には用心を”だ!」
詩織に向かってそう言ったのは。
普段から“チーム全体”のことを考えてくれている、キャプテンだった。
「チームはどんな時も5人構成なんだ。
いざって時のことも考慮して立ち回るのが
正しいチームの形ってもんだろ?」
「それは分かってるけど…」
やっぱり、さすがはキャプテンって感じだな。
これには流石に、詩織も黙り込んでしまった。
その様子を見て、少し可哀想になってしまったのだろうか?
史奈の隣で、キャプテンが小さく溜息をついたかと思うと。
私と紗恵の間を通って詩織に近づいた。
「分かった分かった…
次は詩織が活躍できるようにやってみるから」
「ほんと?!やった〜!!」
「ただし!史奈を活かして点を取ること!」
「えぇ〜〜〜??」
「“えー”じゃない!!」
キャプテンが詩織に近づいたその流れで。
そんなやりとりをしながら、2人は揃って自陣側に歩いて行った。