第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「よっしゃあぁあぁーーー!!!」
スリーポイント獲得時には、この通り。
もれなく史奈の歓喜の叫びがセットになる。
私としては、スリーポイント単品で十分満足なんだけど。
だけど、史奈の叫びは、本人が嬉し過ぎるあまり“抑えきれず出てしまっているもの”らしいから。
“声が出れば出るほど好調”とも取れるんだよな…
だから、史奈のご機嫌チェックのためには、割と欠かせない情報だったりもするんだ。
「声出てんな?よし、あいつ今機嫌はいいぞ」みたいな。
「“歓喜の叫び”は、史奈からのサービスみたいなもんだから」と、私たち全員プラスの方に考えてる。
考えてはいるけれど…
「声出したら少なからず体力減るよな?体力減らしてるのに、タダ売りってむしろ損してね?」と思ったことは、他の奴らには秘密だ。
とにかく、現状は史奈の機嫌は保たれたみたいだ。
スリーポイントを決められて、“ご満悦”って顔をしている。
クリッとした丸い目を開いて、歯を見せて私に笑ってみせた。
もう見飽きてしまった笑顔だ。
殿の“銃兵”の“ご満悦顔”を拝むための道のりは、だいぶ大変だったぞ?
“生贄”と“囮”と“護衛”が、せっせこ働いたのに。
良いところは、全部持っていかれちまった。
それでもやっぱり、ゾーンディフェンス(この戦況)を変えられるのは、史奈しかいなかった。
それは間違いない。
スリーポイントラインギリギリから、っていう条件付きではあるんだけれど。
逆に言えば、その条件“さえ”クリアできれば。
史奈は必ず、スリーを決めてくれる。
だから、条件を調えてやるんだとしたら。
それはやっぱり、私たちの仕事なんだ。