第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
役者は揃った。
床を蹴ったオレンジ髪の史奈。
髪をまとめるのに、ヘアピンで事足りるその姿は、髪の靡きは少なく。
その代わりに、天井から降り注ぐ光を反射させ。
史奈が空中を動くたびに、キラキラとした光が髪の中を走っていた。
SGを生業にしてるコイツに、スリーポイントライン上でボールが回れば。
コンマ数秒後には、ボールがゴールリングを潜っている。
ふと、ここまでの試合の流れを振り返えってみると…
史奈にとっては、ヤキモキするプレイばかり選択していたと思えてくる。
って言うのも、最終クォーターに入ってから、史奈は大して目立った動きも点も決められていなかったし。
それに先程の完全マンツーマンのときは、手も足も出なかったから。
だから今の史奈(あいつ)、だ~いぶフラストレーション溜まってんだろうな。
マンツーマンも考えものだけど。
ゴール付近ばっかを全員で守ろうとしても、結局意味ねぇーよ。
特に、史奈がご機嫌斜めの時は…
「シュッ!!」
地面を蹴った史奈の体が、最高到達点に行き着いた時。
史奈の手から、ボールが放られた。
アーチを描いて、ゴールに近づくボール。
緊張の中、全員がその行く末を見守る。
けれど途中で分かった。
あれは“入る”。
それに、曲がりなりにもチームの点取りとして、執念とも取れるほどポイントに貪欲な史奈が。
こういう場面で外すなんて、絶対にない。
そう思ったのと、ほぼ同時だった。
史奈の手を飛び出したボールが、ザシュッ!!っという音を立てて、リングに入っていった。
最終クォーター、初のスリーポイントとなった。
「よっしゃあぁあぁーーー!!!」