第5章 二人でアオハル
は五条の腰にしがみついたまま、うっすらと見える黒く大きな物を上空から見下ろしていた。
「見たい?」
「…え?」
「の目に一時的に呪力をまとわせて、見させてあげる。」
五条はの目に手のひらをかざした。
ぶわっと流し込まれた呪力に、は何度も瞬きをした。
「わっ…!」
「あれが特級呪霊。」
はしっかりとソレを見据えていた。
にも見えるようになったのだ、五条たちが見ている世界が。
黒く、長い紐のようなものが何本も何本も重なり一つのボールのようになっていて、クルマ2台分くらいの大きさだった。
うごうごと蠢いていて、は顔を顰めた。
「初めて、ちゃんと見た…。あれが呪霊。」
『キラァァイ!女ぁ、しねぇぇぇ……!』
どこに目があるのかわからないが、紐の先を上空のたちに向けながら、呪霊は叫んでいた。
「何故、彼女が嫌いなんだ?」
ふわっと浮きながら、五条は少し呪霊に近づいた。
は怖くて五条にさらに強くしがみついた。
「大丈夫、僕にも僕に触れているにも、攻撃は当たらないから。」
五条は安心させるようにに言ったが、それでも恐怖の方が強いは首を振った。
「何故、彼女を狙う。」
再び五条は呪霊に尋ねたが、呪霊は同じことしか言葉を発しようとしなかったため、五条は諦めたようにため息をついた。
「コミュニケーションはとれないか。仕方ない。」
五条は指をまっすぐ呪霊に向けた。
その指の先から、赤く光が灯った。
は五条にしがみつきながらも、その様子を見つめていた。
「ーー…わぁ。」
なんて、綺麗な赤色なんだろうかと、は目が離せなかった。
ぎゅーっと何かのエネルギーが五条の指先に集まっていく様子を間近で見つめていた。
「術式反転【赫】」