第5章 二人でアオハル
私たち大人組も、座席を動かし向かい合わせの席にした。
悟さんはすでにいそいそと東京駅で買ったであろうお菓子を広げている。
「ねぇ、先生!その人だれだよ!」
隣のボックス席からピンク髪の男の子が私を見ていったので、私は会釈をして名前を名乗った。
「と言います。」
なんて言えばいいんだろう。
引率?
五条先生の彼女が付いてきましたよ。なんて言えるはずもないし、ましてや、心臓がつながっているので離れられません。とも言えない。
「あー、この子?」
悟さんは私の手首を掴み立ち上がらせると、新幹線の通路に立たせた。
3人の生徒が私に視線を向けている。
私は緊張でピシッと背を伸ばした。
いつのまにか出発している新幹線の揺れに倒れないよう、私は近くの座席の背もたれに手を乗せた。
悟さんは私の頭に手を乗せ、こほんと咳払いをした。
「ちゃんでぇーす。今回の研修中、君たちにはこの子を守ってもらいます!傷すらつけちゃダメ!それが今回の研修の課題になりますっ!」
いえーいっと一人拍手をする悟さんをわたしは驚いて見つめた。
「えぇぇぇ!?」
「本人がいちばん驚いてるじゃねぇか。」
黒髪の生徒が腕をくみ、私を見ている。
目がキリッとしていて、かなりのイケメンだ。将来有望そうだ。
「まさか本人に説明してないの?」
「してなかったっけ?」
女生徒に指摘され、悟さんはとぼけるように言った。
首を傾げても可愛くない。
「してませんっ!」
「この子は非術師だけども、ちょーっと特殊で色々あって、アレです!守ってもらいます!」
説明雑すぎで、誰も理解していないだろう。
悟さんの後ろで傑さんが肩を震わせているのが見えた。