第5章 二人でアオハル
私は目隠しをしている頬にそっと唇を寄せた。
「なーに。先生してる僕がかっこよかった?」
「そんなところ。」
「引率はいつ?」
「え?僕は行かないよ。傑が代わりに行くことになってる。」
ーー…あ。私がいるからだ。
とっさにそう思った。
ガイドブックを真剣に見て、生徒たちのことを考えてる悟さんにも、行ってもらいたいなー。
傑さんが代わりに引率にいくんじゃなくて、私と傑さんが此処で留守番していちゃダメなのだろうか。
「おっと、ごめんね。呼び出しだ。」
スマホのバイブ音の後、悟さんはソファから立ち上がった。
「いってらっしゃい。この本借りていい?勉強しとく。」
「あぁ、頼むよ。」
悟さんはくしゃっと私の頭を撫で、頬にキスを落とすと、携帯片手に部屋から出ていった。
行かせてあげたいなー。教え子たちと京都。
ペラペラとページを捲る。
有名な場所が並ぶガイドブックを見ながら、私はそう思った。
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次の日、夜寝る前に部屋に来た悟さんは、ソファの前の机にプリントを広げていた。
色鉛筆で何かを書き込んでいる。
「見て。可愛いでしょ。」
女子高生みたいなことを言いながら、サングラスの隙間からキラキラとした目で私を見上げる悟さん。
【ナイスガイオススメ!ここは行っておけ!】
と、デカデカと書かれていて、横には自分の似顔絵だろうか、目隠しした顔が書いてあった。
その下には京都の名所の写真がプリントされている。
「まさか…しおりを一人一人手書きで描いてるの?」
「そっ。三つだけだしね。」
私は何も言えなかった。
行ってもらいたい。
こんな教師、他にしらない。